コーヒー好きにこそ知ってほしい「日本茶」のスペシャリティな世界

コーヒー豆と日本茶の茶葉を並べて、スペシャリティという共通点を示したイメージ コーヒー

リード

先日、コーヒー雑誌で抹茶ブームについての記事を読んだのがきっかけでした。

スペシャリティコーヒー愛好家としては、正直「抹茶フラペチーノは邪道」くらいに思っていたのですが、その記事は「日本茶もしっかり見つめよう」と主張していて、妙に引っかかりました。

試しに日本茶の世界を調べてみたところ、出てきたのは意外な発見でした。

「スペシャリティコーヒーと滅茶苦茶似てる」。

この記事では、コーヒー好きの視点から見えてきた、日本茶とコーヒーの構造的な共通点を整理します。

アラビカ種とロブスタ種——お茶でいう「中国種」と「アッサム種」

コーヒーの2大品種といえば「アラビカ種」と「ロブスタ種」です。実はお茶の世界にも、同じ構図がそのまま存在します。それが「中国種」と「アッサム種」です。

中国種はアラビカ種と同じように、冷涼な環境でゆっくり育つことでアミノ酸を蓄え、日本茶や高級ウーロン茶になります。一方のアッサム種はロブスタ種のように熱帯の強い日差しに耐え、タンニン成分が多くなるため紅茶に向いています。

日本茶もウーロン茶も紅茶も実は全部一緒!?

コーヒーと大きく異なるのがここです。紅茶もウーロン茶も日本茶も、基本的には「品種の違い」ではなく「発酵度の違い」でできています。同じ品種でも、発酵させなければ日本茶に、超発酵させれば紅茶になるという構図です。

筆者は佐賀県の嬉野で和紅茶を見かけることが多く、てっきり違う品種を育てているのだと勘違いしていました、、、

ゲイシャやブルボンはどこにいる?——「やぶきた」と「さみどり」

日本茶にも、品種改良された栽培品種が存在します。コーヒー界の「ブルボン」や「カトゥーラ」に当たるのが、日本の茶畑の約7割を占める「やぶきた」です。バランスが良く育てやすい、大定番の品種という位置づけです。

品評会を席巻する「ゲイシャ」のような個性派に当たるのが「さみどり」や「おくみどり」で、抹茶に使われます。抹茶の世界にも「セレモニアルグレード(スペシャルティ)」と「カリナリーグレード(コモディティ・加工用)」というランク分けがありますが、全国で統一された基準ではないようです。

全国茶品評会や地方別の品評会は、コーヒーでいうCOEに近いものといえます。産地やテロワール、品種の組み合わせで様々なバリエーションが生まれるのは、コーヒーも日本茶も同じです。

ケニアはコーヒーよりも、紅茶生産大国

お茶の輸出量世界第1位はケニアです。イギリスのティーバッグ紅茶の半分以上がケニア産といわれています(生産量そのものでは中国が圧倒的な1位です)。

ケニアの主要品目別輸出を見ると、紅茶は園芸作物に次いで第2位。一方コーヒーは第4位で、紅茶の輸出額の4分の1以下にとどまります。赤道直下の高地というテロワールで、一年中アッサム種を収穫できることが、ケニアの最大の強みになっています。

発酵(酸化)度の違いでお茶の種類が変わることを示す図。不発酵茶(0%)は日本茶(緑茶)、半発酵茶(〜20-80%)はウーロン茶、全発酵茶(100%)は紅茶・和紅茶に分かれ、いずれも同じ茶葉(品種)から作られることを示している

中国のスケール感と日本の進化——「蒸し」と「日陰」

中国種の生産量トップは、原産国である中国です。年間300万トン以上という規模で、日本の7〜8万トンとは桁が違います。ペットボトル緑茶や抹茶スイーツの加工用原料として、日本国内にも大量の中国産緑茶が入ってきています。

日本の緑茶の強みは、「旨み」への異常なまでのこだわりにあります。中国の緑茶は「鉄鍋で炒って」発酵を止めるため香ばしい味わいになりますが、日本は「蒸気で蒸して」発酵を止めます。さらに最高級の抹茶や玉露を作るために、「収穫前に日光を遮る(被覆栽培)」という、世界でも特異な技術を発展させてきました。

これによって苦味を抑え、アミノ酸由来の濃厚な「旨み」を限界まで引き出しているわけです。グローバルで見ればマイナーな産地である日本が、独自製法によって「究極のスペシャルティ」の座を確立しているのは、なかなか痛快な話だと思います。

まとめ

お茶とコーヒー。 植物も歴史も違うふたつの飲み物が、品種のヒエラルキーから加工の思想、グローバル市場での棲み分けに至るまで、ここまで共通した構造を持っているとは正直思いませんでした。

次に自家焙煎のコーヒー豆を選ぶとき、あるいはペットボトルの緑茶を買うとき、そのパッケージの向こうにある「品種」や「製法」のストーリーを、ちょっと思い出してみると、いつもの味がより味わい深いものになるかもしれません。

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