リード
前回、ドイツには焙煎コーヒー1kgあたり2.19ユーロという、独自の「コーヒー税」があるという話を書きました。
書きながら、気になったことがあります。
その税があるドイツで、実際のところコーヒーはどれくらい飲まれているんだろう。
……というわけで、今回はドイツのコーヒー消費そのものについて、あらためて調べてみました。
消費量、焙煎業者やカフェの数といった指標から、ドイツのコーヒー事情を見ていきます。
そもそもドイツはどれだけコーヒーを飲んでいるのか
二つの物差しで見る消費量——167リットルと6キログラム
まず、基本の数字から確認します。
ドイツの1人当たりコーヒー消費量には、2つの物差しがあります。
- 飲用量ベース:年間約167〜168リットル(2020〜2024年のデータ)
- 焙煎コーヒーの重量ベース:年間約6kg(2021年)
単位も年次も違う、別系統の数字です。
数字の大きさもさることながら、個人的に驚いたのはこちら。
ドイツ国民の約88%が、毎日コーヒーを飲んでいるそうです。
水やビールを上回る、文字どおりの「国民的飲料」。
世界順位で見ると、総消費量でアメリカ・ブラジルに次ぐ世界3位。
欧州全体の消費量の約26%を、ドイツ1国が占めているといいます。
数字だけでも、コーヒー大国ぶりが伝わってきます。
周辺国と比べると——ドイツ人は本格派が多い?
では、周辺国と比べるとどうなのか。
面白い指標がありました。カプセル・ポッド式コーヒーの普及率です。
- フランス:32%
- オランダ:31%
- ベルギー:27%
- ドイツ:14%
ドイツだけ、はっきり低いんです。

ドイツは欧州のなかでも全自動コーヒーマシンの所有率が高く、自宅で豆を挽くスタイルが根強く残っているようです。
一方、周辺国はカプセル式が主流。
カプセル式が劣るということではありませんが、ドイツでは挽きたての豆でコーヒーを楽しみたいという本格派の方が多いのでしょうか。
また、ドイツといえばメリタを始め、あらゆるコーヒー機器のトップランナーでもあります。そういった点ももしかすると、一般市民の消費の在り方に関係しているのかもしれません。
そしてもうひとつ興味深い話。
前回、ドイツではコーヒー税があることを話しましたが、ルクセンブルクのような非課税国との国境付近では、ドイツより安い価格でコーヒーが売られているという話もあります(口コミ・体験談レベルの情報のため、どこまで一般的かは留保が必要です)。
国境を越えてコーヒーを買いに行く人がいる、というのも、税がある国ならではの行動かもしれません。
焙煎業者・カフェの数から産業規模を見る
焙煎業者は約2,500社
消費する側だけでなく、作る側の規模も見てみます。
ドイツの焙煎業者数は、現在約2,500社(2025年11月時点、CBI調べ)。
その大部分は、小規模〜超小規模の事業者です。
そして近年の傾向として、クラフト・ロースタリーやスペシャルティコーヒー専門の業者が、毎年のように新規開業しているそうです。
ドイツのコーヒーシーンも熱いみたいですね~。いつか行ってみたい!
カフェは約28,000店(2018年時点)、コロナを経てどうなったか
カフェ・喫茶店の数は、約28,000〜29,000店(※2018年時点のデータ)
内訳を見ると、約97%が独立経営(多くはベーカリー併設)。
専門のコーヒーショップは2,200店以上ありますが、売上の84%はチェーン店が占めるという、寡占的な構造になっています。
そこにコロナ禍が直撃しました。
2020年の売上は、前年比43%減。
厳しい数字です。
ただ、2024年以降は回復・成長が見込まれているとのこと。
一方で、伸びているセグメントもあります。
スペシャルティコーヒーは、2018〜2019年で前年比5%増。
一般のコーヒー消費の伸び(1.2%増)を、大きく上回るペースです。
安価に大量消費する市場から、少しずつ「質」を求める方向へ動いている——そんな空気が、数字からも伝わってきます。
何度も言いますが、ドイツのコーヒーシーンも熱いですね~。
調べてみて分かったこと
- 飲用量ベースで年間約167〜168リットル、焙煎コーヒー重量ベースで約6kg。どちらの指標で見ても、ドイツは世界有数のコーヒー消費国
- ただし「量」で強い一方、カプセル・ポッド式のような高単価スタイルの普及率は、周辺国よりはっきり低い。量には強いが、単価には慎重、という消費スタイルが見えてくる
- 焙煎業者は約2,500社、カフェ・喫茶店は約28,000〜29,000店(2018年時点)。コロナ禍で売上が43%減という打撃を受けながらも、2024年以降は回復・成長が見込まれている
- スペシャルティコーヒーの伸び率(前年比5%増)が、一般的なコーヒー消費の伸び(1.2%増)を上回っており、「量」から「質」へのシフトも進みつつある
前回書いた「コーヒー税」は、この消費量や産業規模を大きく縮めるほどのインパクトは持っていなさそうだ、というのが率直な印象です。焙煎コーヒー1kgあたり2.19ユーロという税額そのものが、1杯あたりで見ればごくわずかであることを考えれば、当たり前かもしれませんが。
むしろ見えてきたのは、税の有無よりも、ドイツらしいコーヒーとの付き合い方でした。
まとめ
ドイツは、消費量でも産業規模でも、今も欧州トップクラスのコーヒー大国でした。
ただ、数字を並べてみると、量だけでは見えてこない部分もありました。
カプセル式コーヒーの普及率のように、「量」ではなく「消費スタイル」の違いが、周辺国との比較で初めて見えてくる、ということもなかなか興味深いな、と感じました。
国王によるコーヒー独占、コーヒー嗅ぎによる取り締まり、高いコーヒー税、密輸、、、
ドイツ国民のコーヒー愛はいろんな困難を乗り越えてきた、と思うと、このような数字も納得できるかな、と思います。
スペシャリティコーヒーと言えば、北欧ばかりに目が行きがちですが、ドイツも素晴らしいコーヒー文化があるようです。いつか、ドイツにも行ってみたい、、、コーヒーショップについてもリサーチしてみようと思います。
それでは、Tschüs!
注記
この記事の数字は、リサーチ時点で確認できた資料の範囲で整理したものです。指標によって単位・年次の前提が異なるため、他の記事や統計と比較する際はご注意ください。本文中の消費量は「飲用量ベース:年間約167〜168リットル(2020〜2024年)」と「焙煎コーヒー重量ベース:年間約6kg(2021年)」という単位・年次の異なる2系統の数値であり、同一の指標として合算・比較はできません。焙煎業者数(約2,500社、2025年11月時点)とドイツコーヒー協会の会員数(約300社、2020年時点)も集計対象が異なる別の数字です。カフェ・喫茶店数(約28,000〜29,000店)は2018年時点のデータであり、現在の店舗数を示すものではありません。オランダ・フランスの1人当たり総消費量は、今回のリサーチでは具体的な数値を確認できませんでした。ルクセンブルクとの越境購入に関する記述は、口コミ・体験談レベルの情報に基づくものであり、統計的に裏付けられたものではありません。


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