リード
前回記事ではコーヒー好きが知っておきたい日本茶の「スペシャリティ」な世界ということで色々と調べてみました。
そこで今回は日本が誇るべき日本茶の栽培・精製に関する部分を深掘りしていこうと思います。
調べてみると、コーヒーと共通している部分があったり、なかったり、、、
まず全体像:煎茶・玉露・ほうじ茶・番茶はどこで分かれるのか
まずは全体像ということで、、、
日本茶の分岐点は、大きく分けて2つです。
- 栽培方法(収穫前に光を遮る「被覆」をするかどうか、期間はどれくらいか)
- 収穫後の加工(揉むかどうか、焙煎するかどうか)
この2つの掛け算で、種類が決まるようです。
例えば、煎茶は、露地で普通に育てた茶葉を、蒸して→冷まして→何段階も揉んで→乾かす。荒茶を作ったあと、選別・火入れ・ブレンドという仕上げ工程を経て、私たちの手元に届きます。ざっくり言うと2段階・十数工程ですが細かい工程は今回は省きましょう(^^;
玉露は、この煎茶と収穫後の工程名はほぼ同じ。
最大の違いは、栽培段階で光を遮る「被覆」をすること。 葉が柔らかいぶん、蒸し時間や揉む力加減も煎茶よりずっと繊細に調整されるそうです。
ちなみに抹茶の原料になる碾茶も被覆栽培をしますが、こちらは「揉む工程を一切やらない」という、また別の分岐があります。
それではその「被覆」に何の意味があるのでしょうか、、、
なぜ玉露は甘くて苦みが少ないのか——被覆栽培の仕組み

玉露の甘さの正体は、テアニンというアミノ酸(旨味成分)です。
このテアニン、根っこで作られて、新芽に運ばれて溜まっていきます。
ところが。
露地栽培だと、新芽が紫外線を浴びることで、このテアニンが少しずつカテキン(渋み・苦味の成分)に変化してしまうんです。
だから、被覆する(光を遮る)ことでテアニンからカテキンへの変化がブロックされ、テアニン、つまり旨味成分が多く残るということなんですね。
具体的には、玉露の場合、摘み取りの20日以上前から遮光を始め、最終的には95〜98%以上まで光を遮るそうです。「かぶせ茶」という種類もありますが、玉露よりも緩やかで、期間も7〜14日前後ということで「被覆の強さの違い」ということみたいです。
葉の色が濃い緑になるのも、独特の「覆い香」がするのも、実はこの被覆の副産物だそうです。
玉露はどれだけ手間をかけて育てられているのか——被覆栽培の実際

ここまでは「なぜ甘くなるのか」というメカニズムの話でしたが、実際に畑で何が行われているのかを知ると、また印象が変わります。
まず、被覆は一気にかけるわけではないそうです。収穫の20日以上前から、遮光率を55〜60%程度から始めて、最終的に95〜98%以上まで段階的に引き上げていく。 茶樹の様子を見ながら少しずつ光を絞っていくということでしょうか。
覆い方にも種類があります。
棚がけ被覆は、茶樹の上に棚を組んで、その上に資材をかける方法。新芽が資材に直接触れないぶん葉が傷つきにくく、高品質な玉露に向いているそうですが、当然ながら棚を組む手間がかかります。対する直がけ被覆は、茶樹に直接ネット(寒冷紗)をかぶせるやり方。効率的な一方、ネットが新芽に触れて温度が上がりやすいという側面もあるようです。
そして最高級品に使われるのが本ず(ほんず)被覆。よしず(葦)を広げ、その上に「わら」を数日おきに少しずつ積み重ねて遮光率を調整していく、という伝統的な手法です。天然素材ならではの調温・調湿効果があるそうですが、これはもう機械化のしようがない、職人の手作業そのものですよね。今は化学繊維の寒冷紗を使うのが主流とのことですが、それでも収穫前の約20日間、風雨に合わせて張り具合を調整し、収穫直前には外す、という作業自体は変わりません。
さらに、高品質な玉露は基本的に年1回の一番茶だけを摘み取り、そのあとは翌年のために茶樹を深く刈り込んで休ませるそうです。しかも古葉や枝が混ざらないよう、職人が一葉ずつ手で摘み取る「手摘み」(”ハンドピックだ!”)で仕上げるとなると、当然、収穫できる量はごくわずかになります。摘んだあとも、被覆栽培の新芽は組織が薄く柔らかいぶん、蒸しや揉みの工程でも力加減を精密に調整する必要があるようです。
棚を組み、光を少しずつ絞り、わらを積み、一葉ずつ摘む——工程を並べてみると、玉露という一杯にはかなりの手間が積み重なっていることが分かります。この「手間暇そのもの」こそが玉露の「スペシャリティ」な部分なのかもしれません。
そして、これだけの手間を、毎年繰り返しているのが茶農家さんです。まさに”職人”の域だと思います。改めて日本が誇るべき存在だなと感じました。
「蒸す」工程は何のためにあるのか——コーヒーの精製との違い
さて、大切な茶葉の栽培が終わってからがまた大変です。
前回記事でも触れましたが、日本茶である所以、それが未発酵です。栽培されたその時から発酵が進んでいきますので、それを早く止めなければいけません。そこで、重要となってくる工程が「蒸し(殺青;さっせい)」というわけです。
「蒸し(殺青)」では、約100℃の蒸気を素早く当てて、緑色と成分をキープします。深く蒸すほど渋みが抑えられて旨味が濃くなり、浅く蒸すほど香りが立つ、という違いが出るそうです。
対になるのが釜炒り製で、300〜400℃の鉄釜で炒り、茶葉自身が出す蒸気で酵素を止めます。勾玉のような形になり、渋みの少ないすっきりした味と釜香という独特の香りが特徴のようです。日本の緑茶は9割以上が蒸し製とされていますが、釜炒り製は九州の一部などで作られる希少なタイプ、という位置づけです。
コーヒーの場合は生豆を精製する時点で発酵させるので、目的は全然違いますが、熱を入れる、という点ではなんだかコーヒー焙煎と似てますよね。実際、深煎り・浅煎りならぬ「深蒸し・浅蒸し」という表現は実在しています。
しかし、決定的に違うのは一般的に深蒸しの方が苦味や渋みが抑えられ、まろやかな甘みや旨味を感じやすいようです。コーヒーとは逆ですよね。
熱を長く入れることで茶葉の細胞壁が細かく破壊されます。その後の精製の過程で苦味の原因のカテキンが流れ落ちてしまったり、逆に最終的にお湯を注いだ時にテアニンなどの旨味成分がより抽出されることで苦味成分を感じにくくさせる、ということが原因のようです。なるほど、、、
ほうじ茶と番茶は「分類の軸」がそもそも違う
少し番外編です。実は、ほうじ茶と番茶は分類の「軸」自体が違うようです。
ほうじ茶は「加工」による分類です。 下級の煎茶や番茶、茎茶などを原料に、150〜200℃で焙煎する再加工茶。メイラード反応でピラジン類が生まれ、あの香ばしさになります。
番茶は「原料」による分類です。 二番茶・三番茶・秋冬番茶といった収穫時期や、硬い葉・古い葉・茎といった部位で決まります。作り方自体は煎茶と同じ、蒸して揉んで乾かすという工程です。
ちなみに地方によっては後発酵させる番茶(阿波番茶など)もあるそうで、これはもう普通の緑茶とは全然別の工程になるようです。
まとめ
煎茶・玉露・ほうじ茶・番茶の違いは、「なんとなく高級かどうか」ではなく、栽培方法(被覆の有無)と加工工程(揉み・焙煎の有無)の組み合わせの違いでした。
今まではなんとなく美味しいな~と思いながら、お茶を飲んでいましたが、こうやって違いを知ると、味わい方もなんだか変わってきそうじゃありませんか?
工程を知ってから飲むと、いつもの日本茶がちょっと違って見えてくる。
そして、その美味しさの裏には農家さんの途方もない手間が隠れていました。まさに日本が世界に誇るべき”職人芸”だと感じました。
スペシャリティコーヒーの世界は遠い地球の裏側の話と思っていましたが、スペシャリティな世界は案外我々の近くにあるのかもしれません。あー、いつか茶畑の見学に行ってみたい、、、


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