信頼できるかかりつけ医の選び方

総合診療医として10年以上勤務していた私が日々の診療で疑問に思うことを日記として残しておきたいと思い、このブログを開設しました。勿論、真面目な話だけではなく、4人家族としての父としての日常、趣味(コーヒーや家庭菜園など)、日々の発見についても記録しようと考えています。

ということでまずは医療のこと。

私は総合診療医として、10年以上総合病院に勤務しています。その中で、地域の診療所の先生方から患者さんを紹介していただくことが多く、原因がはっきりしない症状の方も多く受け入れてきました。しかし実は、前の病院の先生とのコミュニケーション不足や信頼関係のこじれが原因で、とても不安になって来院される方も少なくないと感じています。

こうした患者さんには、特別な検査や診断をすぐに行うわけではなく、相手の顔をしっかり見て、少し長い時間をかけて話を聞くだけで、安心して帰られることがしばしばあります。「先生は初めてこんなに話を聞いてくれた」「そういうことだったんですね」と言ってもらえてありがたいなと安堵する反面、悶々とした感情が喉にひっかかるのも事実です。

しかし、よくよく考えると、日本の医療制度では「かかりつけ医」を選定するという制度がないし、そもそもどうやって選んでよいかわからない、というのが実情かなと思います。

海外のかかりつけ医制度との違い

日本と海外の医療制度には大きな違いがあります。例えばアメリカでは、健康保険のネットワーク内で自分の担当医(Primary Care Physician)を選ぶ。この医師が、専門医への紹介や全体的な医療の窓口として機能するわけです。イギリスではGP(General Practitioner)に登録して地域ごとに決まった医師と継続的に関わるのが一般的。

海外では、医師の評価や患者レビューを確認できる専用のウェブサイト(例:HealthgradesやZocdoc)が充実し、患者さんは口コミや医師の経歴、専門分野を確認しながら選ぶことができるみたいです。また、GPの評価制度では、生活習慣病の管理や予防の成果に応じて報酬が変わる仕組みもあるので、そりゃGPも頑張って患者満足度を上げようとするわけです(実際には大きな問題も生じているようですがこれはまた別の機会に)。

一方、日本ではまだこうした情報が限定的で、口コミや評判だけでは判断しにくいというのが、かかりつけ医が見つけにくい原因と思います。私自身も子供のかかりつけはどこがいいかな、と思って探すけど、口コミサイトで決めたことはあまりなかったと思います(多分それ以上に小児科領域では利便性や診察のスムーズさが大事なのかも)。そのため、実際に受診して医師との相性やコミュニケーションを確認することが、やっぱり重要じゃないかと思うわけです(本来であれば、わざわざ受診することは非常に面倒ですし、そもそも保険診療なので、「試しに受診してみる」というのは問題がありますが)。

口コミサイトがもっと充実すれば、解決できそうなのですが、日本では「日本医師会」が絶大な力を持っているので、なかなかそうはいかないのかもしれないですね。

かかりつけ医を選ぶポイント

では、患者さんが信頼できるかかりつけ医を選ぶには、どのような視点が大切なのでしょうか。

私自身の経験を踏まえてポイントを挙げてみます。

  1. 説明が丁寧かどうか
    月並みだけど、例えば医療用語をあまり使わない、という点が大事かなと思います。「CRPに異常ないんで」とか言うのは個人的にNGです。この検査は○○という意味でこれが異常だから、こういうことが考えられます、というようなわかりやすく、かつ論理的な説明が「丁寧な」説明と思います。
  2. 意見の違いに柔軟に対応できるか
    これ、一番重要なポイントです。1のポイントはまず大前提なんですが、必要な検査や治療に対して、是非質問や反対意見を投げかけてみてください。「インフルエンザの検査だけでいいと思ったのになぜコロナの検査もするの?」とか「血圧の薬は飲みたくないから次回まではこのままで」とかなんでもいいと思います。そういった反対意見や質問をした際に、丁寧に対応してくれるか、という点が大事かと思います(質問攻めにするのは良くないですが)。これ自体は他の職種の営業でも言えることだと思いますが、相手の予想外の答えに対してどのような反応を取るか、というところでその人の人間性やスキルが見えてくると思います。こういった場面で横柄な態度をとられたり、適当な対応をされた場合にはかかりつけ医を考え直すことも必要ではないかと思います。
  3. コミュニケーションの取りやすさ
    相談しやすいか、質問しやすいかといった雰囲気も大切です。大前提として医師も人間であるということ。つまり、患者と医師である前に人間と人間なので、当然相性という曖昧な定義が生じてしまいます。こういった部分はやっぱり実際に診察してもらわないとわからない部分かなと思います。
  4. 通いやすさ
    日常的に通いやすい距離にあるかも、長期的な信頼関係を築くうえで大切です。日本人はブランディングに弱い方なので、医療に関してもついつい総合病院というブランドに 目が眩みがちです。なぜか大学病院の先生の方がクリニックの先生よりも医師としてスキルが上と考えてる患者さんが驚くほど多いです。提供している医療は何も変わらないのに、です。でも私がご高齢の方々にいつも説明するのは、 今はいいけれども、足腰が弱ってきて受診できなくなってきたとかいう場合に、それからかりつけ医を探しましょう、では遅いと思うんです。 自分の状態を元気な頃からずっと診てくれているかかりつけ医が近くにいるというのが安心感が大事なんです。この部分はエビデンスに欠けるのですが、やはりずっと診てきた患者さんであれば医療者側も少しの異変で「○○さんがこんな風に痛がっているのはおかしいな。これはただことではないぞ」と気づきやすいんです。それが初めましてだとやっぱり伝わりづらいこともあるわけなんです。ですので、自分の家の近くにかかりつけ医を探すということがやっぱり重要だろうと思います。

長く付き合える医師を見つける意味

日常的に通いやすく、安心して相談できる医師を持つことは、健康管理の大きな支えになると思います。ちょっとした体調の変化も相談できる環境は、病気の早期発見や生活習慣改善にもつながるはずですし、もっと大きなことを言うと日本全体の医療費を削減することにもなると思います。

私自身、多くの患者さんを診る中で、医師の専門知識だけでなく、話を聞く時間や態度によって「安心」を届けられることの大切さを感じています。是非「安心」が共有できるかかりつけ医を探してみてはどうでしょうか。

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